「大局観」を読んでみた。

読んだ本:大局観
著者:羽生善治

いろいろな本を読んでいて書評のペースが完全に追いつけない状況ですが、
この本はなかなか感じるものも多かったので振り返ってみることにしました。

この本は最近発売したばかりの新書です。
最近の新書の特徴(自分が勝手に思う)として、タイトルがキャッチーで面白そうだけど、
それについて語られているのはごく一部という本が多い気がします。

この、大局観という本も例外ではなく、大局観以上の内容がたくさん詰まっています。
冒頭の羽生さんの言葉を借りてこの本を定義するならば、

棋士生活二十五年と満四十歳のまとめ」として書かれた、勝負に対する羽生さんの考え方の本。

勝負の世界に身を置く、また置いていた人なら共感できるところも多いように思うし、
共感できない次元の話もたくさん出てきます。

以下は、特に印象に残った部分とそこで考えたことなどを綴ってみました。

上達して進歩するプロセスとは、ミスを徐々に少なくしていくこと

ここで大事な考えだなぁと思ったのは、今の自分がミスをするものだと前提する考え方。
5点の自分がいろんな知識や経験を得て100点を目指すというよりも、
マイナスからのスタートで一歩一歩そのマイナスを消していくイメージに近いのかな。

ミスを恐れて自分の枠の範疇で一生懸命やったところで上達や進歩は望めない。
冒険して、ミスを犯しながら学んでいくことが成長過程には必要なんだろうな。

「相手の目を見る」
相手を真正面から見ることは、現実を見据えることであり、逃げることなく挑戦することを意味する

自分に自信がないときは本当に目を見れなくなることが多いので、ズシっと響くものがあった。
例えば久しぶりに練習に参加するときに監督と挨拶するときとか、選手と話すときとか、
そういうところで日常の自分に対しての取り組みが全部見える。
どこか見透かされているようで怖くなって目を逸らしてしまったり・・・。

まぁもっと大事なのは、「相手の目を見れなかった」自分を直視することですね。
そこに気付くことすらできないとなると、相当ヤバい状態にあると思う。

集中力を鍛える3つのポイント
①何も考えない時間を持つ
②ひとつのことをじっくり考えるのに慣れる
③時間と手間のかかることに取り組むこと

そう考えると将棋という競技そのものがもう集中力を鍛えるプロセスですね。
もちろん磨きあった集中力のぶつけ合いの場でもあるけれど。
何も考えない時間、というのは、普通に過ごしてて意外にないから意識してみようと思った。

「真面目にコツコツと積み重ね、真面目に不必要な物を捨てる」
という作業を繰り返してゆく先には、深遠な真理があるのではないか。

この言葉を言える羽生さんがもう既に相当深遠に近い人な気はしました(笑)
「勝って奢らず、負けて腐らず」の精神にもどこか通じるものがある気がします。

捨てることが非常に苦手で未だに本質とは違うことに時間を浪費してしまってますが、
コツコツ積み重ねるところは本来得意なのでそれを軸に色々やろうと思いました。


次はあとがきのラストの文章。正直この文章だけ読めたらこの本の価値があるとさえ思えた。

私はこれまで、何と闘うという目標を立ててやってきていない。信じて頂けないと思うが、常に無計画、他力志向である。突き詰めると、「結論なし」となる。人生は突き詰めてはいけないと思う。何のために闘うのかは、七十歳になってからじっくり考えたいと思う。

(゜д゜)←感想を的確に表した顔文字。

大局観だとか、勝負だとか、テーマは色々あるものの、羽生さんの人柄だったりオーラだったりが元々すごく好きだった自分にとっては彼の持論がたくさん読めて満足できる一冊でした。

すごくわかりやすい文章でいろんな観点で書かれているから、まとまった時間がない人もちょっとずつ読んで楽しめると思います。


以上。