価値とは何か

肝に銘じます。

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・「ものごと」をつくっているときに、
 よく陥ってしまいがちなのは、
 「やりくり」が仕事だ、と思いこんでしまうことだ。

 前はこうだったから、次はこういうことだろう。
 ここは、こういう意見があったから、こうしよう。
 これをこうすると、少し節約ができる。
 おっと、あの人がこれだと怒るかもしれないよ。
 これ、じゃまになりそうだなぁ
 ‥‥という具合に、ああでもないこうでもないと、
 条件やら都合やらが、山ほどあるわけです。
 それを「やりくり」するのは、なかなか大変ですよ。
 あちらを立てたら、こちらは立たないし、
 帯に短くてもたすきには長いし、
 時間を何日かけても、何人で考えてても、
 なかなか「やりくり」は困難だし、完成しない。

 だけどそれなのに、「やりくり」は、
 価値やら魅力やらをつくるわけじゃないんだよね。
 「それいいね!」って人がよろこんでくれるのは、
 価値や魅力があるからなんだ。
 「いやぁ、よくやりくりができているから、いいね」
 ということは、ほとんどないと思ったほうがいい。
 
 条件や都合の調整がテーマみたいになってるデザインは、
 つまり、価値を増やしてないんだ。 
 それは、「あちらを立てれば、こちらが立たず」の、
 両方を立てなくするようなことなんだ。
 コピーだって、企画書だって、商品だって、
 サービスだって、人間関係だって、なんだって同じ。
 「いいねっ」「おもしろいね」「すてき」
 という胸の高鳴りと共に発せられるようなことばが、
 つい湧いて出てくるようなことが、価値なんだよね。
 
 やっぱり、「すてき」ってことが、稼いでくれるんだ。
 「やりくり」の仕事も、もちろんあるんだけど、
 「やりくり」そのものが価値だと思ったり、
 仕事なんだと思わないほうがいいよね。
 あちこち見渡してごらんよ、やりくりの結果が、
 街に(そして倉庫に)あふれ返っているから。