「死にゃせんじゃろ。」

死にゃせんじゃろ、の話。糸井さん。

・勇気があるなぁと思える人が、よく言う。
 「いのちまでとられるわけじゃない」
 だれが最初に言ったのか知らないけれど、
 実にまったく、よくできたことばだなぁと思う。
 
 だいたい、なにかやるときには、怖いのだ。
 ただただ安心しきっているなんてこと、なかなかない。
 やったことがないことは、わからないことも多い。
 相手のいることならば、その力量の読みも必要だし、
 その相手の心づもりというものもある。
 とんでもない目にあうかもしれない。
 
 同時に、うまくいったときのことも思うわけで。
 さぞかしうれしいだろうなぁと、にまにましたりもする。
 想像する快感が大きいほど、心配になったりもする。
 
 ゆらゆらゆれちゃってるわけだ。

 ふつうの人の、ふつうの感覚からすると、
 だいたいのことは、怖い。
 ただ、絶対にうまく行くならやりたいと思ってる。
 そうじゃなかったら、やめておきたいと決めている。
 というわけで、たいていは「やめておこう」になる。
 ゆらゆらゆれちゃってるけど、
 そのゆれは、「やるぞ」のほうではなく、
 「やめておこう」のほうで止まるのである。
 
 ずっと、「やめておこう」を経験しているうちに、
 もう、ゆれることさえしなくなっていく。
 うまくいかなかったときに、
 どれほどのひどい目にあうか、
 なんてことも考えなくなってしまう。
 そのことに失敗したら、
 「いのちまでとられるわけじゃない」けれど、
 どれくらいの被害があるのか、
 それさえも考えなくなってしまうのだ。
 うまくいかなかった場合、どれくらいの目にあうのか。
 それをちゃんと考えてみると、
 あんがいたいしたことないと気づくこともある。
 「いのちまでとられるわけじゃない」んだよなぁ。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
ちょっと東京を離れます。休みとひとり仕事を兼ねてね。